ある日、1歳10ヶ月になるスーザンという女の子が、父親に連れられて病院にやって来ました。
皆さんの周りにいる2歳くらいの女の子を思い出して下さい。カタコトを話しますか?歩くことはできますか?怒ったり泣いたり笑ったりしますか?
スーザンが父親に連れられて病院にきた時1歳10ヶ月でしたが、身長は71cm、体重は6.75kgでした。身長はアメリカの乳幼児の平均10ヶ月児、体重は平均の5ヶ月児ぶんしかなく、完全な発育不全でした。
そして運動機能もほとんどなく、歩くことはおろか、ハイハイすることも、カタコトを話すことさえ出来ませんでした。そして情緒的にも不安定で、人が近づくとおびえて泣き出し、逃げようとしますが、その目からは涙も出ていないのです。スーザンはベビーベッドに座り、手をついて体を前後にゆすり続けています。そして無表情で、虚ろな暗い目をしています。食事を与えてもほとんど食べませんでした。
医師はそれから3週間、いろんな角度から検査しましたが、身体的以上は発見できませんでした。そしてその3週間の間、スーザンの両親は一度も病院に来ませんでした。

2016年06月24日 更新
子供達との関わり方。何が大切?『心の食物/その4』
『心の食物/その1・2・3』では、ストロークとディスカウントについてと、マイナスのストロークを求める男の子の実話に基づいてお話させて頂きました。今回はストロークが不足する事で、体にまで影響を及ぼしてしまったアメリカの女の子スーザンのお話です。
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1歳10ヶ月のスーザン
■生みたくない子を仕方無く生んだ母親
医師がソーシャルワーカーを派遣して母親に会ってみると、スーザンの両親は25歳と22歳のまだ若い夫婦で、中級以上の学問を受けたごく普通の人でした。そしてある宗教を信じていました。その宗教が良い悪いは別にして、その教えの中に“子供ができたら中絶をしてはいけない”というものがありました。そのため“仕方無く生んでしまった子供だった”そうです。“まだ2人だけの生活を楽しみたい”“だからまだ子供はほしくない”そして気をつけていたのにできてしまったスーザンを憎み、生んでからも何かにつけてじゃま者扱いにし、ほとんど面倒を見なかったのです。
母親はソーシャルワーカーに「この子は反抗的で、抱かれるのが嫌いなので放っておいたの」「こんな子なので、私はスーザンに愛情を感じません。できるならもうスーザンの面倒は見たくありません」と言ったそうです。その話を聞いた医師は、スーザンの病名を『母性的愛情欠乏症候群』とつけました。
■マザーバンク
それからスーザンに対してどんな事をやったかというと、“マザーバンク”というボランティアの組織から、スーザンの母親がわりになってくれる人に来てもらい、1日に6時間、1週間に5日間愛情を注いでもらいました。病院のスタッフも機会がある度に抱いたり話しかけたり、あたたかいプラスのストロークを与え続けていきました。
すると最初はおびえて嫌がり、涙も出さずに泣いていたスーザンが、食事をするようになり、2ヶ月後には体重が2.7kgも増え、身長が5cm伸びました。さらには人を見ても怖がらないようになり、抱いて欲しいと手を出すようにまでなりました。そこからさらに3ヶ月後には、ハイハイすらできなかったスーザンが、代理の母親と手を繋いで病院の廊下を歩けるほどにまでなりました。表情も明るくなり、人を見て笑顔まで出すようになりました。
愛情だけ、プラスのストロークだけで、これだけの成長をするのです。
これは極端な例かもしれませんが、アメリカでは両親から歓迎されないで、望まれないで生まれてくる子供が、年間70万人以上いると言われています。そして日本でもそのような状態で生まれてくる子供が年間約20万人に達すると言われています。ハッキリとしたデータは分かりませんが、当時と比べ現在ではもっと増えているかもしれません。
そしてさらにストロークが不足すると、病気がさらにひどくなり、死に近づいていきます。
問題行動 ⇒ エスカレート ⇒ 病気 ⇒ 死亡
自分の存在や相手の存在を認めない、そんな行動を起こし、自殺・殺人に至ってしまいます。これは最悪のディスカウントです。
まとめ
アメリカの実話スーザンのお話を聞いて、何を感じましたか。
ストローク不足から、マイナスのストロークを求めて問題行動を起こします。そしてストロークや、マイナスのストロークがもらえないことが続くと、病気までも引き起こしてしまいます。子供の成長にストロークが、どれほど大切なのかがわかっていただけたと思います。
次回は子供や自分を“認める”こと、ストロークを“与える”ことが大切なこと。そして“子供の生き方”にまで影響を与えるということを、お伝えしていきたいと思います。
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